外国籍の人たちにとっての日本再入国: 間に合わなかったか?

ちにとっての日本再入国: 間に合わなかったか?

レスリー・リー著、神沢希洋翻訳

日本の大学に在籍する何人かの留学生が、日本国外での現状としばらく日本に戻れない事情についてVoice Up Japanに語ってくれた。

「2、3ヶ月の間2つの学校の間を行ったり来たりしていました。でも結局全部キャンセルされてしまった。」日本有数の名門大学に在籍する3年生の交換留学生アイリーンさんは語る。交換留学課程が急遽中止になってしまったために、アイリーンさんは半年以上の休学期間を取ることを余儀なくされた。自分の所属する南カリフォルニア大学ではもうすでに学期が始まっていたこともあり、アイリーンさんは留学を続けるために両方の大学に連絡を取った。

数か月にわたりEmailや電話でやり取りを重ね、留学生が勉強を続けられるよう支援する署名活動への協力をしたが、アイリーンさんはどちらの学校にも受け入れてもらえず、一学期間休学せざるを得なくなった。2月5日に彼女が日本を発ったとき、台湾はまだ日本の水際対策措置において入国拒否対象地域に入っていなかった。学生ビザの有効期限が近づいていることもあり、アイリーンさんはしばらくの間日本に戻ることができない。そのため、アイリーンさんの持ち物は日本、カリフォルニア、台湾の三か所で散り散りになってしまっている。

日本の音楽サークルにて、バンドの仲間と一緒のアイリーンさん

数千、少なくとも数百人もの留学生が似たような状況に陥っている。日本でのインターンシップ、奨学金、仕事の機会などがあるなかで、日本に戻りたくない、あるいは戻れない留学生たち。日本政府は在日外国人を入国拒否対象外にする意向を表明したが、多くが不明瞭な規定や、理不尽な条件、そして日本政府のコロナ対策に対する不安を露わにした。外国籍を持つ人々のみを標的にした制限措置はすでに広範囲からの批判を受けている。そしてその流れがさらに留学生たちを日本に戻って勉強を続けることを思いとどまらせていた。

留学生にとって、日本に安全に帰るためのいくつもの条件を達成していくことは容易ではない。法令は不明確なうえ、ガイドラインは幾度となく変更されてしまう。いくつもの外国人コミュニティの掲示板にて日本に帰る際のアドバイスが求められているが、多くは日本への帰還は場合ごとに個別に審査されるため、誤解の無いよう1人1人が対応する大使館や領事館に相談するべき、と解答されている。多くの留学生が日々増える感染者数や、日本へ戻る手続きの困難さ、適度なソーシャルディスタンスを保つことの難しさ、また授業が引き続きオンラインになることを受けて、多くの留学生が日本に戻ることを無期限に延長することを決めた。筆者もそのうちの1人である。

9月1日現在、日本は159ヵ国の地域を入国拒否対象としており、在留資格をもつ外国人で再入国が認められるのは以下の4つの分類に限定される。“永住者”、“日本人の配偶者等”、“永住者の配偶者等”、“定住者(日本国籍をもつ者の配偶者や日本人の子供で居住権を持たない者も該当する。)”のうちどれかに当てはまる者のみだ。留学生や就労ビザ保有者については、8月5日から一回のみの再入国が認められたが、それも渡航先の地域が入国拒否対象に入る前に、その地を出立した者にのみ許可される。外国籍をもつ人々は、自国の大使館や領事館からの再入国確認証が必要になったり、フライトの72時間前に出された陰性のPCR検査結果が求められたりといったハードルを越えなければならない。

渡航制限施行前に日本を出た外国人居住者が再入国できる唯一の条件は、“親族の死亡”といった人道的な事情のために出国した場合のみである。しかし、そのような特別な再入国許可においても、個別の審査を受けるため、許可が保証されるわけではない。水際対策によって大打撃を受けた外国人居住者やビジネスからの批判を受けて、日本政府は9月から入国拒否措置を緩和させる予定だ。多くの人々が海外で立往生することになり、家族にも会えずにいる。

大学側の対応

多くの大学が日本に入国できないでいる新規の留学生たちに対応するため、新たな対策をたてることに奔走している。新しく早稲田大学に入学した留学一年生のレイチェル・シャさんはこう語る。「入国管理局が閉鎖してしまってから、在留資格認定証明書(Certificate of Eligibility、通称COE)を受け取れていません。」在留資格認定書は留学ビザ取得に必要な書類で、ビザがなければシャさんは日本に入ることはできない。「大学側が生徒に(情報を通達する点で)もっとできることがあったはずだと思いますが、おそらく大学側にその責任はないのでしょう。」シャさんは次のように続ける。「大学側がEmailで渡航情報について知らせてくれれば助かるのですが。」彼女は9月と10月分の寮の頭金を既に支払っているが、大学側が返金をしてくれるかどうかわからず不安を感じている。

レイチェル・シャさん

早稲田大学の代表によると、2020年4月に行われた国際政治学部と経済学部の留学生を対象にした調査では、39.1パーセントの生徒が2020年の春学期を日本国外で過ごしていて、17.7パーセントの生徒が渡航制限を受けて日本への引っ越し、または国外への引っ越しを考えていることがわかった。早稲田大学は8,000人と日本最多の留学生を受け持っているが、日米研究インスティテュート(USJI)を通して田中愛治総長が開催したウェビナーによると、5,000人もの留学生が日本に帰ってこれない状況に陥っているという。

経済的不安

レイチェル・シャさんの姉であり、同じく新しく早稲田大学に入学した四年の留学生ジャクリーンさんはこう述べた。「一学期先送りにすることを考えています。」香港を訪れるため6月6日に香港へと日本を発ってから、ジャクリーンさんも再入国できずにいるため、就職活動に影響してしまうのではないかと不安に思っている。仕事の機会が失われたことや、授業がオンラインになること、住居の賃貸契約、また安全面のことも考慮に入れて、休学を考える留学生は多い。しかし同時に、ビザや奨学金には期限があるため、休学することで留学の計画が立ち行かなくなる危険性もある。


寮の仲間とお花見に集まったジャクリーン・シャさん

多くいくつかの大学がコロナ禍の中、生徒に緊急奨学金や経済支援を提供する一方、留学生は不利な状況にある。経済支援に申し込むために必要な書類が入手できなかったり、日本滞在期間等の要件を満たせなかったりしているためだ。奨学金の申請においても、日本に住んでいることが必須であったり、公共料金の請求書といった海外で暮らす生徒には入手不可能な書類が必要だったりと、条件を満たせない留学生は多い。更には、日本ではまだネット銀行の設備が整っておらず、また郵便銀行サービスもオンライン利用ができない。そのため、海外にいる留学生は、以前銀行振り込みで支払った公共料金や家賃などを解約することを困難に感じている。安倍晋三内閣総理大臣による10万円の給付金といった、国家または地方政府からの支払いについても、海外で足止めされていた人々は引き続き日本での家賃や公共料金を支払わなければならないにも関わらず、期限を逃し、給付金を受け取ることができなかった。

留学生の多くは学資援助に頼っているが、海外にいる生徒は日本でのサービスや補助を受けることができず、多数が日本政府から見放されたと感じている。その反面、日本の産業は外国人労働者に深く依存している上に、政府は労働者不足問題は増加する留学生によって解決できると幾度となく豪語してきた。「日本政府は留学生にもっと支援を提供するべきです。」ジャクリーンさんは続ける。「(留学生の)未来は現在とても不安定です。」

他の場所での可能性をさぐる?

前学期を海外で過ごした留学生の何人かは、もともと日本で就職活動をする予定だったのを変更して、別の道をさぐることを決意している。リー・ウィリアムズさんは、春学期で卒業する予定だったが、故郷に残ることを決めた。ウィリアムズさんは春学期に日本で就活を始めて、必要であればビザを延長させるつもりでいた。だが、12月でビザの期限が切れることを見越して、日本に戻って仕事を探す代わりに、他の場所で機会をさぐることにしたのだ。「ずっと前から最後の学期に就活する余裕があるように、2年間平均以上の単位を取ってきました。もし日本に居れたら、春学期は単位数を減らす予定だったのに。」

 リー・ウィリアムズさん

渡航制限は留学生や外国人労働者をますます孤立させてしまい、そのために大勢の人々が教育や仕事の機会を自国で探ることとなった。日本政府は人手不足問題解決のために外国人労働者を切に必要としているのにも関わらず、長期滞在する外国人を下級市民であるかのように扱うという矛盾を抱えている。食い違う大学側からの情報と日本政府からの指示に板挟みになって、多くの留学生が蚊帳の外に放り出された状態だ。

長期的影響

日本政府のコロナ対策を目の当たりにして、多くの留学生はしばらくの間日本に戻ることに不安を感じている。「何もかもが日本に戻ることを思いとどまらせてきました。」とジャクリーンさんは嘆く。ジャクリーンさんは日本での感染者数の増加と就職難について言及した。早稲田大学のいくつかの学部は入学の延期要請を受けていないが、留学生の入学に頼っている多くの大学は財源縮小を感じるであろう。秋学期も継続してオンライン授業になることから、多数の大学は生徒と教授がオンライン環境で授業を進めやすいように講義要綱の改正を行っている。また他方では、適度なソーシャルディスタンスを保ちつつ部分的に対面授業を行うハイブリッド様式を取りいれる大学もある。

PCR検査などにおいて、日本人と日本人以外の居住者では同じ基準が用いられておらず、この不平等な措置は厳しい批判を受けている。“対応が公平じゃないと思います。”とリーさんは語った。リーさんは同じ便に乗り合わせた日本国籍の旅客が陽性だった場合、外国籍の人々にのみ渡航前と渡航後両方の検査の要求をしても無意味になってしまうのではないかと懸念している。国によってはPCR検査を受けることが難しく、検査結果が遅れ、日本で規定されている渡航の3日前までに取得した結果が必要であるという条件を満たせない場合もある。更には、国によってはPCR検査は高価なところもあり、例えば台湾では検査は7,000ニュー台湾ドル、日本円では25,000円になる。2週間の隔離の間に滞在する場所の確保にかかるお金のこともあり、筆者の留学生仲間の多くは日本に戻る必要性よりも、戻る過程にかかる経済的負担が上回ると感じている。さまざまな細かい制限が重なり合い、日本に戻る危険性やかかる費用のことも伴って生徒たちの気持ちは自国に留まる方に傾いているようだ。

限られたPCR検査、要求される大使館や領事館からの書類、2週間の隔離要請や、不明瞭な指針などが留学生を日本に戻るのを阻んでいる。「旅券をキャンセルしないと」アイリーンさんは言った。「もうしばらく日本に戻ることはないでしょう。」

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