日本の「お笑い」の問題~「ハラスメント」を助長する今までの日本の「お笑い」とこれから~

ABOUT THE AUTHOR Wakana/ Wakanaは、一般社団法人Voice Up Japan理事、マーケティングチーフを務める。

OPINION/ 今回のVoice Up Japanメディアでは、日本の「お笑い」の風潮と、現時代に求められる価値観を取り上げる。

「お前さっきから黙って聞いてたら、女のスッピンみたいな顔しやがって。お前な、なでしこジャパンでボランチおらんかった?」これは12月22日に放送された「M-1グランプリ」において、お笑いコンビ見取り図の盛山晋太郎が相方のリリーに対して放った言葉だ。その瞬間、会場は水を打ったかのように静まり返った。以前であれば「笑い」を取れる発言だったかもしれないが、盛山の意図に反して視聴者はこの言葉を「笑えないもの」として拒否したのである。

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日本では、お笑いと社会は深く結びついているといえる。なぜなら、お笑い芸人は朝から晩まで地上波の番組に顔を出し、お茶の間に笑いを届けている。時には情報番組の司会を務め、芸能界に欠かせない存在であるからだ。この国では、それくらいカルチャーとしてお笑いが日常生活に根付いている。欧米で主流の「政治風刺や人種問題」をテーマとしたスタンドアップ・コメディとは異なり、日本では落語、コント、漫才、キャラ芸、一発芸など多種多様なお笑い文化が特徴である。様々な芸を駆使し、視聴者から笑いを得ることに命を懸ける存在が「笑い芸人」といえるのではないか。だが、「笑い」を取ろうとするがために、行き過ぎた「笑い」がある。それが、お笑い界に闇を落とす「性差別」「女性蔑視」「ハラスメント」的行為・発言である。

「バカ殿」の画像検索結果

(フジテレビ)

先ほど冒頭でもあげた盛山のネタは、一昔前であれば「ウケた」であろうが、現在の価値観から捉えると女性蔑視的な発言でしかない。例を挙げると、かれこれ35年続く「志村けんのバカ殿様」。筆者も子供の頃から時折鑑賞していたフジテレビの長寿番組である。変なおじさんやバカ殿様の「アイーン」というネタで子供からも人気を集めたことは読者の皆様も記憶にあるのではないか。しかしこの番組には行き過ぎた差別的な行為・発言を含んだ笑いが時に現れることは無視できない。例えば、同番組のコントで志村演じるバカ殿様は、「普通の布団では寒くて眠れない」「人肌が恋しいから『肉布団』はどうか」と家来に提案する。すると家来は水着姿の8人の女性を呼び、まずは敷布団として呼ばれた4人が仰向けで布団の上に寝そべり、その上に志村が横たわる。次いで掛け布団として呼ばれた4人が志村の上にうつ伏せで乗るという演出であった。(引用:https://news.merumo.ne.jp/article/genre/8256649)その他にも、部下という設定のお笑い芸人に対して熱湯をかけて熱がるところを見て笑いうというシーンもある。これらの例ように、女性を「肉」という「物」でしか扱っていないことは「女性蔑視」であり、人に熱湯をかけるのも言うまでもなく「ハラスメント」を助長している。

上記のような特定な番組だけでなく、お笑い芸人が出演しているバラエティ番組においても、時折「闇」を見る。男性芸人が女性芸人の容姿をネタにして笑いを取ろうとするなどは横行しているように思われる。一方で、女性芸人も「ブス・モテない・おばさん」キャラを演じるなど、自虐を挟み込みがちである。ではなぜ「お笑い」の名の元に女性自身が卑下するのか?それが当時の社会が求める「笑い」の傾向であったためである。

「ハラスメント」などの表現が社会に浸透するようになった今では、昔ほどの過激な行為・発言は減少しつつある。また、上記で挙げた「志村けんのバカ殿様」で出てきたようなネタは世間から「昭和的で古い、笑えない」と批判され、ネット上でも炎上している。徐々に視聴者が求める「笑い」の変化により、芸能界も変わりつつある。

そして、この変化は最近顕著になったと認識されている。冒頭の盛山が発言した番組に出演していた「ぺこぱ」が注目を集めている事実も見逃せないだろう。ぺこぱのスタイルは、どんなこのも否定せずに多様性を認めることで「笑い」を呼ぶ。今までのお笑いスタイルの主流であった「ボケ」と「ツッコミ」は非常識に対するズレを指摘することによってツッコミをしていた。つまり、マイノリティの意見をマジョリティの意見でバカにすることで笑いを取っていたことになる。この形式に従えば、ぺこぱのスタイルは従来のツッコミとは真逆なのである。

2月29日に放送された「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送系)で若林正恭(41)は「M-1グランプリ」を回想し、「多様性とツッコミって相性が悪いと思うのよ。常識が強い時代のほうがツッコミって強いけど、多様性とツッコミの食い合わせって悪いから」と持論を明かした。しかし、ぺこぱの「ツッコまない」ながらも笑いを生む手法については、「時代の転換点みたいなもの」を目の当たりにしたと話し、「ものすごい発明」と評していた。(引用:https://blogos.com/article/427264/

一方で、ポリティカルコレクトネスを配慮しすぎる傾向を踏まえ、「お笑い番組がおもしろくなくなってきた」という声も上がっている。ダウンタウンの松本仁志もこう話している。「スピード違反を起こさないような番組ばっかりで。制限速度60kmっていわれてるのに、もう50(km)も出さないですもんね!30、40 kmしか出さない番組で」。しかし、多様性が求められる今日、行き過ぎた「性差別」や「ハラスメントを助長する」笑いを視聴者ははたして求めているのだろうか?

マイノリティをからかうエンタメは見る側がそれを「面白い」と思わなくなっている時代には求められないだろう。だからこそ、今の時代の風潮に合わせ、だんだん日本のお笑いも変化を遂げなければならない。視聴者側がもっと意識を高めれば、行き過ぎた「ハラスメント」に頼らない新たな「お笑い」を作っていけるのではないか。