「オールジェンダートイレ」はなぜ必要?

Written in Japanese by Mai Miura

「オールジェンダートイレ」とはその名のとおり、どんな性別の人でも利用できるトイレのことだ。「ジェンダーインクルーシブトイレ」、「ジェンダーニュートラルトイレ」と呼ばれることもある。従来、公共の場のトイレは男女別であることがほとんどであったが、近年、世界では性別問わず誰でも利用できるトイレの設置が進んでいる。日本でも2020年秋に国際基督教大学(ICU)がオールジェンダートイレを導入したことがニュースになった。今回、Voice Up Japanはオールジェンダートイレの必要性と影響を探る。

オールジェンダートイレはいわゆる「誰でもトイレ」「多目的トイレ」とは異なり、大きな1つの個室ではなく、従来の男女別トイレと同様、個室が複数ある。個室の中は、全てが一般的な洋式トイレである場合と、従来の男性トイレにある小便器も設置されている場合がある。全ての性別の人が利用できるよう、個室にはサニタリーボックスが設置され、タンポンやナプキンなどの生理用品が無料で利用できるトイレもある。

なぜ、「オールジェンダー」なのか

全ての人が公共の場で、安心して気持ちよくトイレを利用できるようにするためには、オールジェンダートイレの設置を早急に進める必要がある。トランスジェンダー(性が出生時に割り当てられた性と異なる人)、ノンバイナリー(女性・男性の枠に当てはまらない人。XジェンダーやAジェンダー)の人は、従来の男女別トイレを利用しにくい、またはできないという現状がある。例えば、女性・男性かという枠に当てはまらない性別の人は、トイレを利用するたびに無理に選択するという精神的負担を強いられている。また、男性だけれども生理がある人はサニタリーボックスや生理用品の設置されていない男性トイレを利用できない。また、性別に関わらず、外見が社会的なジェンダー規範に必ずしも当てはまらない人は、女性・男性のトイレを利用する際、他の利用者からの不審な目や暴言、暴力の被害に遭うリスクがある。このように、公共の場での男女別トイレ利用に不安を抱えている人、危険にさらされている人も、オールジェンダートイレがあれば安心して利用できる。

男女別トイレの居心地が悪いなら、駅などで見かける「多目的トイレ」を利用すればいいではないかという声もあるかもしれない。しかし、トイレ一箇所あたり「多目的トイレ」は1つしかないことが多く、男女別トイレはあるのに「多目的トイレ」は設置されていない場所も存在する。また、そもそも男女別トイレを心地よく利用することができない人々を「多目的トイレ」のような個室に追いやっている現状は、そのような人々をトイレという公共スペースから排除してしまっている。人権は「マジョリティがマイノリティに認めてあげる」ものではない、とICUのオールジェンダートイレ設置に携わった加藤恵津子教授は語る。「マジョリティのトイレがほとんどを占めていて、マイノリティの方には『はい、1個用意してあります。なんでここ使わないの?』というものではないんです」*。

本来、全ての人が同じように安心してトイレを利用できる状態であるべきだが、従来の男女に分かれたトイレでは排除される人々が存在してしまっている。オールジェンダートイレの導入により、性別や外見に関わらず、同じように安心してトイレを利用できるようにすることが必要なのだ。

選択肢があることが重要

もちろん、オールジェンダートイレの設置は男女別トイレの廃止を意味するわけではない。一部のトイレに性別の制限を撤廃し、あくまでもオールジェンダートイレを選択肢として追加するだけのことだ。ICUでは実際、オールジェンダーに変わったのは本館の主要なトイレのみで、本館東側のトイレは男女別のまま残っているという*。海外ではオールジェンダートイレと男女別トイレが建物内で一階おきに設置されている例や、大学の寮ではフロアに住む学生の要望に合わせ、女性用・男性用・オールジェンダーの切り替えができるようになっている場合もある。「全ての人が安心できる選択肢があることがとても重要です」と加藤教授は言う*。

マイノリティのためだけのものではない

オールジェンダートイレ設置の利点は性的マイノリティの人々が生きやすくなることだけにとどまらない。実際、シスジェンダーであっても、利用する際に自分の性別を意識させられることのないオールジェンダートイレの方が使いやすいという声さえもある。男女別トイレと変わらず普通に利用される場合も多い。ICUではオールジェンダートイレに関する学内アンケートの回答の90%以上が肯定的なものだったという*。トイレが女性用と男性用の2つしか選択肢がないことは、どちらにも当てはまらない人や、社会的に女性用・男性用トイレに属すると外見で判断されない人に、本来のジェンダーとは異なる性別の規範に沿って振る舞うことによる精神的な負担を強いている。暴力による身体的な負担も負わせてしまうこともある。シスジェンダーの人々にとっても、男女別トイレしか選択肢がなければ、不必要に「女性らしさ」、「男性らしさ」を日常的に意識し、それらにとらわれるきっかけとなっているかもしれない。男女で分かれているのが「普通」であると、無意識のうちに性的マイノリティを排除する考え方をしてしまうこともあるだろう。

オールジェンダートイレの設置とはつまり、安心して利用できるトイレが無い人々にトイレを提供するという大きな目的を果たす。と同時に、社会に深く根付く性別二元論やジェンダー規範など、人を傷つける概念に疑問を投げかける。トイレのみにとどまらず、全ての側面においてインクルーシブな社会を作っていく上で、オールジェンダートイレの設置は出発点となるのではないだろうか。

シスジェンダー特権について考えよう

シスジェンダーの人々に、自分たちは社会的に優遇されてきたと気づいてほしいし、気づかなければならない、と加藤教授は語る。果たして個室によりプライバシーが保たれるトイレは性別で分ける必要があるのか。自身がシスジェンダーであるがゆえに持っている特権には、安心して使えるトイレが公共の場でどこにでもあること以外に、どんなものがあるのか。これらはマジョリティに属する者が考えるべき問題だ。今月6月は「プライド月間」(性的マイノリティのアイデンティティを祝い、権利を啓発する月)でもある。身近な人とマジョリティ特権について振り返る機会にしてはどうだろうか。

*は以下の記事より引用

中村衣里. “トイレに“男女”の区別がなくなったら?国際基督教大学にできた「オールジェンダートイレ」を使ってわかったこと”. BuzzFeed. 2021-03-03. https://www.buzzfeed.com/jp/erinakamura1/allgendertoilet, (参照 2021-06-08).

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