「フェミニズムは女性だけの運動ではありません」 ー彼がフェミニストである理由とはー

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Interview by Tohko Hirota and Kiyoka Tokumasu 
 
Profile:
 吉谷 麟(よしたに りん)19歳、国際基督教大学(ICU)1年。フェミニスト&アクティビスト。高校生のときに訪れたカリフォルニアで性の多様性を目の当たりにし、ジェンダー・セクシュアリティー問題に興味を持つ。大学では、同様にジェンダー問題に興味を持つ学生と学生団体ICU PRISMを立ち上げた他、現在は BuzzFeed Japan にてインターン中。

 

ジェンダー問題に興味を持ち始めたきっかけは何ですか?

 高校一年生の3月に、交換留学プログラムでアメリカのカリフォルニア州を訪れたのですが、そこで一番最初にバスガイドさんに連れて行ってもらったのが『カストロ通り』と言う日本でいう新宿2丁目のような場所でした。そこには大きな LGBTQ コミュニティがあり、町に入った瞬間レインボーフラッグがお店の中や教会にもかけてありました。僕にとってそのような光景を見たのは初めてで、それが自分の中で LGBTQ やジェンダー問題に興味を持たせてくれたきっかけになったと思います。

 

 

フェミニストになったきっかけは何ですか?

 ニュースや学校の授業では、日本の社会は女性にはあまり寛容な場所ではないとは習っていました。例えば、日本の女性は働いていても出産や結婚を機会に仕事をやめてしまう人が多いことや、男性と同じ仕事をしていても女性の給料だけが低いこと、女性であることで上の地位の仕事にはつけないという考えが社会に根付いていることなどです。僕の両親は二人とも公務員で教師として働いているため、母も朝から晩まで働いており、父とほぼ同じくらいの年収を稼いでいました。そのため、男女格差は本当に存在しているのか、分からないままでした。しかしICUに入学した後に、この考えは大きく変わりました。ICUの60%以上の学生は女性であり、僕の友達にもフェミニストが多く、そのような人々との会話や授業内でのディスカッションを通して「女性だから」受けてきた辛い経験などを初めて聞きました。そこで初めて、日本社会における男女格差を意識するようになりました。例えば、日本の政治界は男性中心の社会であり、ほとんどの政治家は男性で、他の国と比べると女性が圧倒的に少ないですよね。ICUに入学する前はそのような問題に全く目を向けていませんでしたが、入学後は女性の働き方や、女性の日本社会での生き方にとても興味を持ちました。ICUでの授業や友達との会話を通じて、LGBTQ 問題はもちろん、あらゆるジェンダーの問題に興味を持つようになったことが、自分がフェミニストになったきっかけです。

 ジェンダー問題に関心をもっていても、行動を起こすことは簡単ではないと思います。何故、行動を起こそうと思ったのですか?

 僕は生まれてからずっと島根県の田舎町で生きてきました。そのため、進学を機に上京が決まった時は、東京に来たからには何か行動を起こして人間として成長したいと考えていました。ICUに入学する以前からジェンダー問題にはずっと興味関心を持っていましたが、最初はジェンダーについて学ぶのが怖いと考えていました。というのも、ジェンダー問題を学べば学ぶほど社会に対しての不信感が大きくなり、現実を生き辛くなると感じていたからです。しかしある日、その考えは大きく変わりました。ICUでは学生の英語力向上とクリティカル・シンキングを育てる目的で行われる ELAという授業があります。授業は全て英語で行われ、内容もディスカッションが中心です。僕はその ELAで、同じくジェンダー問題に興味のある一人のクラスメイトに感銘を受けました。彼女と話していくうちに、彼女がジェンダー関連の学生団体(後のICU PRISM)を設立しようとしていることや様々なイベントに参加していることを聞き、僕も行動を起こしたいと考えるようになりました。この友達との出会いのお陰で、自分はアクティビストになれたと思います。最初は友達や周りの人からどう思われるのかを気にして、自らの意見や情報を発信するのは怖かったです。しかし、自分としては「常に自分を持っていて、芯の強い人」になりたかった。そのため学生団体を設立し、自らの意見や情報を発信しています。そして最近では、ジェンダー問題などを多く取り扱っている BuzzFeed Japan でインターンを始めました。これからがとても楽しみです。

 どうやったら「フェミニスト」の悪いイメージをなくせると思いますか?

 僕は男性ですが、フェミニズムは女性だけの運動ではありません。自分のようにフェミニストである男性がさらに増えて社会に訴えかければ、より多くの男性もフェミニズムを身近に考えるようになり、アプローチがしやすくなるのではないかとは思います。

 あなたに一番大きな影響を与えた人々は?

 一人目は、高校の留学時にアメリカに行く時に一緒について来てくれたコーディネーターの人です。その人はいつも笑顔で、そのポジティブな生き方に感銘を受けました。自分の生き方や考え方を変えてくれた大切な人の一人です。

 二人目は、アメリカに滞在していた時のホストブラザーです。二人男の子がいたのですが、お兄さんの方はゲイでした。夜に僕と一緒に話をしていた時、そのお兄さんは自分がゲイであることについての話や、家族にカミングアウトした時のことを話してくれました。カミングアウトをした時、両親から「それは嘘だ」と言われたそうです。しかし今はその両親も彼のことを受け入れ、彼自身も「自分は自分、無理やり自分を変えなくてもいい」と思っていることを、僕に教えてくれました。自分自身をしっかりと持っているその姿はとても素敵で、僕も彼のような人間になりたいと思いました。

 三人目は、ELA のクラスメートの一人です。彼女はとてもアクティブで、自分にない知識をたくさん持っています。そのため、一緒に過ごしていて多くのことを彼女から学んでいます。自分にジェンダー問題を学ぶことから逃げずに向き合わせてくれた彼女と、ICUで出会えたことに感謝しています。

また、ICUに入学したことは自分の人生の中で大きなことだったと思います。もしICU以外の大学に入学していたら、ジェンダー学にここまで興味を持つことも、学ぼうと思うことも無かったかもしれません。ICUには女性が多い分、自分が今まで聞いたことも考えたこともなかった経験などを実際に聞けたというのはとても大きかったです。 また帰国生や留学生も多く、様々なバックグランドを持つ人がキャンパス内にいるため、その人たちからも日々刺激を受けています。

 これからの将来、何をしたいですか?

 まずは留学、3年時の交換留学に応募しようと考えています。ICUはとてもリベラルな場所で普通の大学では学べないことも学べると思いますが、それでも住んでいる場所は日本、やはり日本を一度出て国外で学べることはたくさんあると思っています。留学を通して、知識、価値観、文化の違いなどをもっと幅広く吸収したいです。

現在、自分の興味がある分野はジェンダー学と平和学ですが、それに加えて個人的には自殺防止についても取り組みたいと考えています。まだ入社したばかりではありますが、現在 BuzzFeed Japan にてインターンをさせてもらっているので、可能であればそのようなことに関わるコンテンツや記事を出せたらいいなとは思っています。

ジェンダーも平和問題もそうですが、僕は人権問題にとても興味があります。将来的には人権問題を扱う NGO や NPO などの国際機関で働きたいというのが今の考えです。

 

留学はどこに行きたいですか?

 

 今考えているのはUCLA(University of California Los Angels)です。先輩で一人UCLAに行った人がいたのですが、その人が専攻していたのがLGBT学でした。UCLAは日本よりも研究が進んでいて、さらに詳しく LGBTQ やジェンダー問題について学べると感じました。また個人的には日経アメリカ人にも興味があるので、ジェンダーと共に勉強したいなと考えています。

 なぜフェミニズムに男性が必要だと思いますか?

まず、男性の多くで「フェミニズム」を誤解している人が多いと感じます。フェミニズムは女性にさらに権利を与えて女性を男性より優位にさせるという考えを持つ人が多いのですが、実際は違い、男女平等の世界を実現するための運動です。それを理解するためには、女性から男性に言うよりも男性から男性に言った方が少しは興味を持ってもらえるかなとは思いました。確かに、男性でフェミニストというのは時々自分でも「言いにくいな…」と思ってしまう時もあります。しかしそれを言っていたら行動はできません。僕自身は大胆に「フェミニストです」と自分の中でも思っていますし、人にも言っています。フェミニストであること自体は別に悪いことではなく、むしろ自信を持っていいことだと思うので、それを信じで行動しています。

また男性の中には、「この会社内って男性の方が優位だな…」など、実はジェンダー問題に気づいて人がいるかもしれません。気づいているかもしれませんが、行動に起こせない、行動を起こそうとしない人がとても多いように感じます。日本社会、とくに仕事社会でのマジョリティーは男性になっています。マジョリティーの人たちが社会を変えるために手伝っていかないと、いつまでもマジョリティーとマイノリティーという二極状況です。それは LGBTQ の人々についても言えると思います。世界でみれば異性愛者の人が圧倒的に多いわけですが、異性愛者の人たちが何もしなかったら LGBTQ の人たちは権利や人権も与えられなかったかもしれない。それでは社会的に平等じゃなくなってしまいます。日本の社会において、マジョリティーの人たちがもう少しサポートできるような社会を実現するためには、男性のフェミニストがもっと必要ではないかと思いました。

最後に、今の自分が一番大事にしていることは何ですか?

 

僕が一番大事にしているのは、どんな自分になりたいかを常に持つこと。そしてその中でもずっと大切にしていることは、人に流されないこと。例えば、誰かがこれをやっているから自分も一緒にやろうではなくて、自分はこれをやりたいから、これをやろうという感じで。その時に「挑戦したい!」と思ったことは行動に移すようにしています。例えば、僕の高校では私立大学に進学する人がほとんどいませんでした。それでも僕は高校二年生のときからICUに絶対行くと決めていて、今ではそれが目標から現実になりました。これまでに自分が挑戦したいと思ったことは、今のところ全て実現できています。アメリカに行ってみたい、ICUに入学したい、BuzzFeed Japanで働いてみたいなど…。これからも、本当にやりたいことがあるのならば、そこに強い気持ちをもって挑戦しようと思っています。もちろん、失敗するかもしれません。しかし挑戦無しでは失敗はできないので、とりあえず挑戦して、挑戦しなかったことで後悔のないような人生を送りたいです。